話しその13
ドンキホーテの恋
春、北陸の日本海に面した浜で日課の散歩をしていると、波打ち際の反対側から、ドンと同じ様な犬が、若い女性に連れられてやって来る。すれ違おうとすると、珍しく、ドンが相手の犬に感心を示した。普段は、どんな犬とすれ違っても、何の反応も示さないのに、例え、相手の犬が喧嘩腰で吠え掛かって来ても、唸り声一つ発しなかったドンが、尻尾を振って、相手の犬のお尻の臭いを嗅いでいる。今回は、シベリアン・ハスキーの雌で、目の色はドンの真っ青な色と違って、一寸茶色掛かっているが、体色は殆ど同じで、体格も同じ位。2匹並べるとどっちがどっちか判らなくなる位。人間同士は、お互い、犬同士の挨拶をじっと待って、苦笑いをしているだけ。ドンが乗り掛からない内に、離す事にして、鎖を引っ張り、渋々とドンは雌犬と離れるが、離れがたい様子。何度も振り返って、雌犬の行き先を追っていた。
散歩が終わって、「コンテッサ号」に帰り、お互いに朝食。「コンテッサ号」の外に椅子を出して、海を見ながら、牛乳とパンにキャベツと卵とコンビーフの炒めた物を挟んだ物を食べる。今日は、天気が良いので、移動は無しとする。一日、のんびりと海を見ているつもり。海岸沿いの駐車場だが、他には車は停まって居ないので、ステレオのボリュウムを一杯に大きくして、ジャンルを問わず、音楽を聞きまくる。
シンセサイザーの喜多郎の「古事記」を聞いている時、駐車場に若い女性が入ってきて、「コンテッサ号」に近づいて来る。「コンテッサ号」の窓の外で音楽を聞きながら、海を見ている私の前に来て、「朝、海岸で会った方ですよね。」そういえば、同じシベリアン・ハスキーで散歩していた彼女である。音楽のボリュウムを落とし、話を聞く。家はここから、歩いて5分位の場所に有り、時々、ブラッとこの辺を良く歩いているそうである。良い音楽が聞こえて来たので、引かれる様に、「コンテッサ号」に来たら、朝会った、私が居たと言う訳の様。音楽の話になり、彼女はクラッシックに興味を持っていると言う。「コンテッサ号」に有る、ベートーベンやマーラーを聞き、3時間程居た。途中、紅茶とクラッカーを一緒に食べる。遅くなると、家の人が心配すると、帰って行く。
次の日、昨日と同じ様にドンの散歩をしていると、昨日と同じ場所で彼女と彼女の連れた、シベリアン・ハスキー犬と出会う。ドンも、大喜び。今度は、彼女と、昨日の続きで話し始める。私は来た道を引き返す事に。ドンは血統書が付いているのかと、変な事を聞く。「コンテッサ号」に置いてある、と言うと、見せて欲しいと言うので、「コンテッサ号」に戻り、血統書を見せると、彼女、安心した様子。昨日、家に帰ってから、ドンの事を家人に話すと、彼女のシベリアン・ハスキー犬のアイちゃんの恋の相手には、血統書付の犬で無くてはならないので、ドンが相手に相応しいか、調べて欲しい、と言われたとの事。今春、アイちゃんの交配の相手を捜していたが、気難しいアイちゃんが相手を受け付けず、ドンとは相性が良いようなので、交配の相手にどうかと言う話となった。
そういう訳で、ドンとアイちゃんの交配という事に成り、獣医師の立会いの元で、彼女の家で行うということに成り、次の日に家に来てほしいと、地図を書いてくれた。その日の午後は、目の前の海で、カレイの投げ釣りをして、30cm位のを3匹釣り、夕食のバター焼きと成った。
朝の散歩で、又、彼女とアイちゃんと会い、ドンとアイちゃんの恋は熟した様だ。彼女の家に行く時間が有るので、早々にして、「コンテッサ号」に戻り、彼女の家へ「コンテッサ号」を走らせる。地図の場所に来ると、長い塀に囲まれた豪邸しか無い。正門に廻って、表札を見ると、彼女の加島の姓がでていた。門に付いたインターフォンで来意を告げると、自動門が開き、「コンテッサ号」を門の中に入れる。家の玄関前まで、100mは庭を突ききり、玄関横の車が10台は置ける駐車場へ。彼女が玄関に迎えに来てくれていた。ドンと共に家の中に入り、ドンの健康チェックを獣医さんにしてもらい、家の裏手にある、アイちゃんの囲いにドンを入れる。囲いといっても、30m×30m程も有る。様子見は、獣医さんに任せ、応接室へ入り、コーヒーとクッキーを戴く。1日で良いのかと思ったら、3日は続ける必要が有ると言われ、後、2回はこの家に来れる。
殆ど1日、ドンはアイちゃんの囲いに居て、私は彼女(由香さん)の部屋に案内され、音楽を聞いたり、海外旅行の写真を見て、彼女の話を聞く。由香さんの父親の仕事を聞くと、代議士をしているとの事。国会の有る時は、殆ど東京に居て、無い時でも月の半分は東京に居るとの事。今日は、家に帰ってくると言っていた。
獣医さんも帰り、私もそろそろ出ようかと思っていたら、加島さんが帰ってきて、挨拶に応接室に行くと、話は聞いた、今日は家に泊まりなさい、夕食も一緒にしょうと言われ、泊まる事となる。
豪邸の割には、こじんまりとしたダイニング・ルーム(もっと大きなダイニング・ルームも有るが、普段はこじんまりとした方を使うとの事)で、家族4人と私も入って、夕食となる。由香さんの15才になる弟さんが、私の旅行の事を聞きたがって、離さない。リビング・ルームに移り、私の話で夜が更けていく。
次の日、ドンとアイちゃんと一緒に散歩をして(由香さんも)、1日、家に閉じ籠もっているのもと、由香さんと彼女の車(ユーノス・ロード・スター)で街に出て、映画を観る事にする。「ダメージ」をやっていたので、観る。Hなシーンが多く、由香さんにどうかと思ったが、面白がって観ていた。
映画館を出て、ドライブをしょうと、私が運転をして、海岸沿いの有料道路へ。飛ばしても良いかと聞き、由香さんも目一杯すっ飛ばしてと、乗り気なので、ユーノス・ロード・スターの性能を目一杯引き出し、時々、コーナーではヒル・アンド・トウでエンジン・ブレーキを効かして減速してから、カーブ中はアクセルを踏んで加速して、カウンターで尻の振りを押さえながら、タコメーターの針を踊らせる。由香さんはジェット・コースターみたいと大喜び。湖で休憩して、帰りは、ゆっくりと走らせる。由香さんは、うっとりと助手席で景色を見ていた、と思ったら、「私の処女をあげる。あなたにあげる。」と、急に言い出す。箱入り娘で、今まで機会が無かったが、今、処女を失いたく成ったと。
嫌いな方では無いので、有料道路を出た所に有った、モーテルにユーノスを入れる。彼女の体は弾んでいた。
次の日も彼女とドライブしてから、モーテルに入る。今度は、昨日と違って、女の喜びを知った様で、3回せがまれる。充分に堪能して、彼女の家に戻る。
ドンの方も、順調に行ったようで、後ろ髪を引かれるが、断ち切って旅を続ける。