話しその10
夜、国道を走っていると、道路の半分を通行止めにして、舗装工事をしていた。工事現場の横を通っていると、8Tタイヤ・ローラーと酒井のR2マカダム・ローラー(前輪、後輪とも鉄輪の機械)が舗装面の表面仕上げをしていた。
R2を良く見ると、古い形式のタイプで、前輪の前側と後輪の後ろ側の泥除けが地面すれすれに付いている。1990年頃までに出ていたR2はこれがオリジナルで、私が機械リース会社に入った時、有ったR2もこのタイプであった。機械の出庫点検をしていて、R2に関して、唯一何回も修理しなければならない場所がこの、泥除け(特に後輪)で有った。リース機なので、修理すると、お客さんに請求しなければならず、トラブルの元になっていた。
ローラーは舗装面表面を走り回り、端っこギリギリまで圧接しなければ仕事にならない。前輪の前の地面すれすれに付いた泥除け(正確には合材落とし)と後輪の後ろ地面すれすれに付いた泥除けが電柱や道路と歩道の間の段に接触する事があり、悪く接触すると、泥除けを曲げたり、壊す。
地面すれすれに付いているから、接触するのであって、高い位置に持ってくれば壊されることもないのじゃないかと考えた。
前輪の前側のはフレームにボルト止めされているステーごと泥除けのバーを1.5m程上に付け直す。ボルト止めにしたいが、そのためにはフレームに孔を開けなければならず、厚さ15mmの鉄板に孔を開けるには手持ちのドリルでは出来ない、鉄板に強力な磁石で付くドリルがあるが、それを使うには、前輪を外さなくてはならない、と、大仕事になるので、ステーをフレームに溶接する。それを左右で行う。
後輪の後ろ側は1.5m程の1本棒(アングルに泥除け材が付いたもの)なので、これを高い位置に持ってきて、固定するために、ステーを制作し、後輪左右のフレームに溶接し、泥除けのアングルをステーに取り付ける(アングルが首振り出来るようにボルト1本で、完全に固定せず)。泥除けを鉄輪側に引っ張るようにスプリングを付けても良いが、アングルと泥除け材(プラスティク製)の重みで鉄輪に押しつけるので、そのままにする。後輪前側の泥除けが後ろ側の泥除けとバーでつながって、互いに鉄輪側に引っ張るようになっていたが、後ろ側が上に行ったので、前側が鉄輪と離れてしまい用をなさないので、バーを短くし、ネジを切り直し、ステーをフレームに溶接して、前側泥除けが鉄輪側に引っ張り、なおかつスプリングで多少動くようにする。
このように改造し、現場に出すと、それからは泥除けのトラブルは全くなくなった。
R2のその後に出た機械を見ると、私の方法に似た、ちょっと大げさにスプリングを使った(そうしなければメーカーとして面目がないのではないか)、泥除けになっている。
同じ現場で、8Tタイヤ・ローラーが動いていたが、オペレータが何か騒いでいる。コンテッサ号を徐行させ、聞くと、水が出ないとか聞こえる。ローラーの水が出ないと、舗装に使った合材がタイヤに付き、舗装面がデコボコになり、仕事にならない。修理を呼んでもすぐに来られる訳なく、現場の作業が止まってしまい、時間までに終わらなくなるので、現場監督の怒りは頂点に達する。
片側通行の終わった所にコンテッサ号を停め、工具箱を持って8Tタイヤまで歩き、オペに話しかける。8Tタイヤの散水は2種類有って、タイヤに直接水をかけるタイヤ散水と、路面に水を撒く路面散水が有り、ポンプの形式が全く違う。タイヤ散水は電気モーターを使い、路面散水はエンジンの回転を取り出してポンプを駆動させている。聞くと、路面散水が出ないらしい。8Tタイヤの上に昇り(運転席の有る船のデッキの様な場所)、ポンプの駆動ベルトの見える蓋(20cm四方)を開き見ると、Vベルト(2本有る)は付いている。エンジンを回し、PTOレバーを手前に引き、入れにすると、ちゃんと回っている。水タンク(車体の殆どはタンクになっている。)キャップを開け、水を確認すると、ちょんと入っている。後は、ポンプ内に空気が入っていて、水を吸い上げない状態しかない。ポンプ上の蓋を開け、ポンプの呼び水入れのコックを回して弛め、水道ホースの2m位のを持ってきて貰い、タイヤ散水用のエレメント(運転席左側に付いている透明なケース)手前に付いている、エアー抜き用コックに付いている細いホースを抜き、水道用ホースをコックのドレン部にあてがい、ホースのもう1方は路面散水ポンプの呼び水コックを開けた穴に差し込み、タイヤ散水のスイッチをONにしてドレンコックをドレン側にしてホースを経由させ水を路面散水ポンプに送る。エンジン回転を上げ、ポンプを回していると、呼び水穴から水が噴き出してきたので、エンジン回転を下げ、呼び水コックを取り付け、路面散水の車体後部に付けた左右のノズルから水が勢い良く出るのを確認して、終わり。
現場監督が飛んできて、「直ったか、すぐに作業にかかれ!」と怒鳴る。
私には、「どこの修理屋でしょうか。まだ呼んでなかったんだけど」と言うので、通りがかりに、困っているようなので、修理をしていたことが有るので、手伝いましたと言うと、修理代だと、1万円を差し出す。素直に貰っておく。